【はじめに】

 相続の手続を進めようとしたとき、
 「相続人の一人と連絡が取れない」「どこに住んでいるのか分からない」
といった状況に戸惑う方は少なくありません。
 行方不明の相続人がいると、相続登記や遺産分割は難しいのではないかと、不安に感じてしまうものです。
 しかし、行方不明の相続人がいる場合でも、状況に応じて相続手続を前に進めるための方法が法律で用意されています。

【行方不明の相続人を除いて手続を進めることはできません】

 相続の相談では、「連絡が取れない相続人がいるなら、その人を除いて遺産を分ければよいのではないか」という声を耳にすることがあります。
 しかし、相続手続では、行方不明であっても相続人であることに変わりはありません。
 行方不明の相続人を除外して遺産分割協議を行ったとしても、法律上の要件を満たしていないため、有効に成立していないこととなります。
 その結果、相続登記ができなかったり、預貯金の解約が進まなかったりすることもあります。
 相続手続を前に進めるためには、法律に基づいた方法を選ぶことが大切です。

【行方不明の相続人がいる場合の主な解決策】

 行方不明の相続人がいる場合でも、相続手続を進めるための制度が用意されています。代表的な解決策は、次の3つです。

(1)不在者財産管理人を選任する方法

 行方不明の相続人が生きている可能性が高い場合に利用されるのが、不在者財産管理人という制度です。
 家庭裁判所に申立てを行い、行方不明の相続人に代わって財産を管理し、必要な手続に関与する人を選任してもらいます。
 この制度は、次のような場合に利用されます。
・生存は確認できているが、所在が分からない
・長期間、連絡が取れない状態が続いている
 不在者財産管理人が選ばれることで、相続手続を前に進める道が開けます。
 なお、遺産分割協議は財産に関わる重要な行為であるため、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加し、遺産分割協議を成立させるには、家庭裁判所の権限外行為の許可が必要になるのが一般的です。

(2)失踪宣告を利用する方法

 行方不明の期間が長く、生死が分からない状態が続いている場合には、失踪宣告という制度を検討できることがあります。
 失踪宣告が認められると、行方不明者は法律上、死亡したものとして扱われます。
 これにより相続関係が整理され、相続手続を進めやすくなります。
 ただし、失踪宣告には一定の要件や手続期間が必要です。
 また、失踪宣告後は、その人の配偶者や子などが新たに相続人となる場合もあります。
 制度の影響はケースごとに異なるため、慎重な判断が必要です。

(3)遺産分割調停を利用する方法

 相続人同士の話し合いが難しい場合には、家庭裁判所における遺産分割調停を利用する方法もあります。
 裁判所が関与することで、当事者だけでは整理が難しいケースでも、話し合いを前に進められることがあります。
 ただし、相続人が完全に行方不明の場合には、不在者財産管理人の選任や失踪宣告と併せて進めることが一般的です。

 どの方法を選ぶかは状況によって異なります
 行方不明の相続人がいる場合でも、状況は事案によって異なります。
・所在が分からないが、生存の可能性が高い
・長期間、生死不明の状態が続いている
・相続人同士の話し合いが難しい
 どの制度が適しているかは、事情によって変わります。
 自己判断で進めず、専門家に相談することが大切です。

【相続登記の義務化についても知っておきましょう】

 令和6年4月から、相続登記の申請が義務化されました。
 正当な理由なく期限内に相続登記をしない場合、過料の対象となる可能性があります。
 行方不明の相続人がいる場合でも、
・不在者財産管理人の選任を進めている
・失踪宣告の手続を検討している
 など、状況に応じた対応を取っていることが重要です。

【司法書士に相談することで、安心して進められます】

 行方不明の相続人が関係する相続では、
・戸籍や住民票、戸籍の附票などの調査
・相続関係の整理
・家庭裁判所への申立て手続
・相続登記までを見据えた手続の整理
 など、さまざまな対応が必要になります。
 司法書士は、相続登記を中心に、相続手続全体を見据えてサポートできる専門家です。
 早めに相談することで、不安を軽くしながら手続きを進めることができます。

【まとめ】

 行方不明の相続人がいる場合でも、相続手続を前に進める方法はあります。
・行方不明だからと言って勝手に相続人を除外しない
・法律に基づいた制度を利用する
・早めに専門家に相談する
 相続登記や相続手続でお困りの際は、お近くの司法書士に相談してみてください。

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