「相続人として今ごろ請求されたけど・・・」

亡くなってから何年経っても~ときには10年、20年経っても~亡くなった人宛てに書類が届くことがあります。通信販売の案内?同窓会のお知らせ?放っておいてよいと思われる書類もありますが、そのままにしておいてはいけない書類もありますので要注意です。
この記事ではそのままにしておいてはいけない書類とはどのようなものか、そのような書類が届いたときの正しい対応方法をお示しします。

固定資産税の納付書?

亡くなった人が不動産を所有していた場合はどうなるでしょう?不動産の所有権登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権移転の登記を申請しなければなりません(登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨の申出をすることもできます)。
相続による所有権移転の登記申請を行えば市区町村から送付される固定資産税の納付書は新たな登記名義人のもとに届くことになりますが、当該登記申請を行う前は亡くなった人宛てに固定資産税の納付書が届きます。
固定資産税の納付書の宛名を変更してもらうのは市区町村の窓口ですぐできますが、これはあくまでも『宛名』の変更にすぎないことに注意してください。亡くなった人が所有していた(不動産を含む)相続財産は、遺言書がない限り、相続発生の瞬間に相続人全員の共有になります。できる限り速やかに遺産分割協議を行って相続を原因とする所有権移転登記を申請してください。

見慣れない請求書?

見慣れない封筒で亡くなった人宛てに書類が届くかもしれません。差出人は個人かもしれませんしどこかの会社・事務所かもしれません。この場合は亡くなった人が債務を負っていたことも考えられます。
『債務(さいむ)』というのは借金を返済しなければならないなど誰かのために果たさなければならない義務のことです。
いずれにしても内容を確認しなくてはなりませんので、相続人として内容を確認してください。
記載内容がどのような内容であっても慌ててはいけません。大至急対応しなければならないことが書かれているものであれば注意が必要です。まずはご家族・ご親戚に相談してください。場合によっては自治体や地元の司法書士会などが主催している法律相談に行ってみるのもよいでしょう。

見慣れない請求書(個人から)

心当たりがない個人から請求書が届いた場合はどのように対応するのが望ましいでしょうか?
最もよろしくない対応は、内容がよく分からないからと相手方に連絡をしてしまうことです。不用意に連絡をとってしまうことは望ましくない結果を招くことがよくありますので注意してください。後述しますが『承認』というリスクがあります。この場合は専門家への相談をおすすめします。

見慣れない請求書(会社・事務所から)

会社・事務所から見慣れない請求書が届いた場合はどのようにすればよいでしょう?
まずは差出人の確認です。会社・事務所をウェブサイト(ホームページ)で検索してみましょう。検索結果がいつも正しいわけではありませんので注意が必要ですが、差出人が実在する会社・事務所かどうか見当をつけることができます。
つぎに請求されている内容を改めて確認してください。最も多いのは借金でしょうか。借用書などの証拠書類が同封されていたとしても対応方法は複数考えられます。すべての選択肢をテーブルの上に用意し、準備を整えてから相手方に連絡を取る必要があります。個人からの請求と同様『承認』というリスクがありますので十分に注意してください。

『消滅時効』『承認』とは

民法には『時効』という制度があります。取得時効と消滅時効がありますがここでは消滅時効に関して、借金を例に、分かりやすく説明します。
先に説明したとおり、借金を返済しなければならない義務のことを『債務(さいむ)』といいます。他方で借金を返してもらう権利を『債権(さいけん)』といいますが、債権はある要件を満たしたときに消滅します。これを『消滅時効』といいます。
ここで注意しなければならないのは、債権が消滅しているときに借金を返済する義務を負う人の選択肢は二つ存在するということです。一つは債権がすでに消滅しているので返済しませんという意思表示をすること、もう一つは、債権は消滅しているけれども『承認』して借金を支払いますという意思表示をすることです。
消滅している債権を承認するということは借金を返済する義務を負う人にとっては不利益ですので、合理的に考えれば『承認』をすることはないのですが、借金を返済してもらう権利を持っている人の立場からすれば『承認』してもらいたいと考えることになります。

ある要件?

「債権はある要件を満たしたときに消滅します」と先に書きました。①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、②権利を行使することができる時から10年間行使しないときに債権は消滅することが民法で定められています。
ただし、消滅時効には前に述べた『承認』以外にもさまざまな定めがあり、法律の適用には難しいところがあるということを忘れないようにしてください。

まとめ

この記事でお伝えしたいことは、見慣れない請求書が届いたときに相手方に連絡をするときは、すべての選択肢をテーブルの上に並べたうえで慎重に対応しなければならないということです。
周囲の人や専門家に相談のうえ対応してください。

裁判所から書類(訴状)がきたら

 最後に裁判所から書類(訴状)が届いた場合について触れておきます。あまり考えられませんが亡くなった人宛てに訴状が届くことも可能性としてはあり得ます。
 宛先になっている名義人がすでに亡くなっていることを配達員に伝える必要がありますが、誤って受け取ってしまったときは、速やかに専門家に相談してください。誤って訴状を受け取りそのままにしておくと大変な不利益を被ることも考えられますので至急対応する必要があります。

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