相続登記の申請に必要な書類

相続登記の申請は、相続によって不動産を取得した際に必要な手続です。

相続登記の申請は2024年4月1日から義務化され、相続により所有権を取得した人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わなければなりません。

相続登記の申請を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があるほか、将来不動産の売買や担保設定ができなくなるなどのデメリットが発生する可能性もあります。

相続登記の申請に必要な書類は、遺言書がある場合、法定相続分に従う場合、遺産分割協議を経る場合などケースごとに異なります。

本記事では、相続登記の申請方法、必要な書類、相続登記を怠った際のリスクについて解説します。

この記事では以下のポイントが分かります。
・相続登記の申請手続に必要な7つの主要書類
・自分で相続登記の申請手続を行う場合と、司法書士に相続登記の申請手続を依頼した場合の手続方法
・相続登記の申請手続の全体の流れ

相続登記とは

相続登記とは、亡くなった人の不動産を相続人が取得したことを公示するために行う手続です。

相続登記をすることで、相続人がその不動産の所有者であることを第三者に主張することができます。

相続登記の重要性

相続登記は、不動産の所有者を明確にするために、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に行う必要があります。

相続登記の申請手続は自分で行うことも可能ですが、相続登記未了の土地を発生させてしまったり、古い担保が残ったまま気づかず登記を放置してしまったり、意図しない誤った登記がされてしまう可能性がありますので、できる限り司法書士に依頼することをおすすめします。

相続登記の申請手続を怠っていると、不動産の所有者が不明確になるため、第三者に不正な登記をされるおそれがあるほか、関係者や隣地所有者などと争いが起きたり、売買や抵当権設定等ができなくなったりするなど不利益を被る可能性があります。

詳しくは、「相続登記未了が引き起こす問題点」の記事で解説しています。

相続登記の申請手続に必要な主要書類

相続登記の申請手続を自分で行うにしても、司法書士に依頼するにしても、必要となる書類があります。

相続登記の申請手続を行うにあたって必要となる書類やその取得場所、取得する理由などは以下のとおりです。

書類名 取得場所 取得する理由
名寄帳の写し・登記事項証明書 役所・法務局 直接法務局に提出はしませんが、亡くなった人の死亡した時点での不動産の所有権などの登記事項を確認するために取得します
亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等 役所 亡くなった人の相続関係を証明するために取得します
亡くなった人の住民票の除票の写し 役所 亡くなった人の住所の証明(本籍地入りで取得する必要があります)
相続人全員の戸籍謄本 役所 相続人が現存していることを証明するために取得します
遺産分割協議書及び相続人全員の印鑑証明書 相続人が遺産分割協議により、不動産の所有権をどのように分割したのかの証明のために作成します
相続関係説明図 亡くなった人と相続人の関係を分かりやすくまとめ、戸籍謄本等の原本を還付してもらうために、相続人又は相続登記の依頼を受けた司法書士が作成します
固定資産評価証明書 役所 登録免許税を算定するため、不動産の評価額が分かる資料を取得します

相続登記の申請手続の方法

相続登記を自分で行う場合、戸籍謄本等の取得費用や登録免許税以外の費用はかかりません。

司法書士に依頼した場合の報酬の目安は日本司法書士会連合会が実施した報酬アンケートをご参照ください。

相続登記の手続は、次の4つのステップで行います。

司法書士に依頼した場合、基本的に書類の収集から調査、作成、申請まですべて司法書士が行います。

ステップ1:相続する不動産を確認する

相続が開始されたら、まず、亡くなった人が所有していた不動産を確認します。

不動産の確認を行う際は、名寄台帳の写しや登記事項証明書を取得して調べます。

亡くなった人が遺言書を残していた場合は、遺言書の内容に従って不動産の所有権を相続します。

遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の所有権をどのように分けるかを決めます。

ステップ2:相続登記の申請に必要な書類を収集する

先ほど紹介した以下の書類を準備します。
・亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍全部事項証明書、戸籍謄本、除籍全部事項証明書、除籍謄本、改製原戸籍(以下「戸籍謄本等」という。)
・亡くなった人の住民票の除票の写し(本籍の記載のあるもの)
・相続人全員の戸籍謄本
・固定資産評価証明書

ステップ3:遺言書の内容を確認し、または遺産分割協議で引き継ぐ人を決め書類を作成する

亡くなった人が遺言書を残していた場合は、遺言書の内容に従って不動産の所有権を相続します。
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の所有権をどのように分割するかを決めることが一般的です。

遺産分割協議が成立した場合には、遺産分割協議書を作成し、相続人全員が実印を押印します。

ステップ4:管轄の法務局へ申請する

自分で相続登記の申請手続を行う場合、相続登記の申請書のひな型は、法務局のホームページからダウンロードできます。

司法書士に相続登記の申請手続を依頼した場合、司法書士が申請書を作成し、必要な添付書類を整えて管轄の法務局に提出します。

相続登記に必要な書類一覧

相続登記の申請手続では、相続人や相続の形態によって必要な添付書類が異なります。

形態ごとの必要書類は、以下のとおりです。

【遺言書がある場合】

登記申請書
遺言書
亡くなった人の戸籍謄本等
相続する人の戸籍謄本等
不動産を取得する人の住民票の写し
固定資産評価証明書
(司法書士に依頼する場合には)委任状

【遺産分割協議による場合】

登記申請書
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等
相続人全員の戸籍謄本等
遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印)
印鑑証明書
不動産を取得する人の住民票の写し
固定資産評価証明書
(司法書士に依頼する場合には)委任状

【法定相続分による場合】

登記申請書
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等
相続人の全員の戸籍謄本等
相続人全員の住民票の写し
固定資産評価証明書
(司法書士に依頼する場合には)委任状

相続人の証明書類

相続人であることを証明するためには、以下の書類が必要です。
・亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本等
・亡くなった人の住民票の除票の写し(本籍の記載のあるもの)
・相続人全員の戸籍謄本等

遺産分割協議書の必要性

遺産分割協議書とは、相続人が遺産をどのように分割するのかを決めた書類です。

相続人全員の合意が必要です。

遺産分割協議を行わず、法定相続分どおりに遺産を相続する場合は、遺産分割協議書は不要です。

遺言書(公正証書遺言)とその扱い

公正証書遺言は、遺言者が公証人の面前で口述した遺言内容に基づき、公証人が作成した遺言書です。

法律上の効力は他の方式の遺言と同様ですが、公証人が作成するため遺言書の形式等に不備がなく、また、一般的に証拠力が高いものと考えられます。

公正証書遺言を作成するためには、遺言者と証人2人以上が公証役場に出向き、遺言の内容を口述する必要があります。

その他、公証人が出張をする方法により公正証書遺言の作成を行うことも可能です。

公証人が遺言書を作成した後、原本は公証役場で保管され、遺言者には正本と謄本が交付されます。

公正証書遺言の内容を変更する場合には、公正証書遺言でなくても構いませんが、再度公証役場に出向き、新たな遺言書を作成することをおすすめします。

遺言書の重要性や書き方については「あって良かった遺言書」で、詳しく解説しています。

期限内に相続登記の申請を行わないリスクと予防策

2024年4月1日から相続登記の申請が義務化になりますが、相続登記の申請が義務化されることを知らずに未だに相続登記を行っていない人もいるのではないでしょうか?

ここでは、期限内に相続登記の申請を行わないリスクと予防策を解説します。

相続登記期限を過ぎた場合のリスク

相続登記の申請手続を行わないことによるリスクは、大きく分けて以下の2つが挙げられます。

①不動産の売買や担保設定ができない

相続登記をしていない不動産は、名義が亡くなった人のままとなります。

そのため、相続人はその不動産を売買したり、担保設定したりすることができず、有効に活用できません。

②権利関係が複雑になる

相続登記をしないと、不動産の所有者が誰なのかが、不動産登記の記録上、明確になりません。

そのため、相続人同士や第三者との間でトラブルが発生するリスクが高まります。

相続登記は、相続人が不動産を円滑に活用するために必要な手続です。

相続が発生した場合は、司法書士に依頼して速やかに相続登記の申請をすることをおすすめします。

相続登記における罰則

自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしないと、10万円以下の過料が科される可能性が生じます。

そのため、相続登記の申請期限を適切に把握しておきましょう。

相続登記の申請を先延ばしにするリスクと解消策

相続登記の申請手続は、相続関係や登記手続に関する知識や書類の収集・作成などの手間・労力が必要です。

そのため、相続登記の申請手続を先延ばしにする方もいますが、相続登記の申請は3年以内に行わなければならないので、なるべく早く終わらせましょう。

相続登記の申請手続の際、登記申請書や添付書類に不備があると、補正を求められることもあります。

書類等の収集や作成、法務局における対応等、多くの手間・労力や精神的な負担を考えると、最初から司法書士に依頼することがおすすめです。

以下は、名義変更の流れと費用についてです。

相続登記の申請手続フロー

相続登記の申請手続の全体の流れは以下のとおりです。

相続登記の完了までにかかる期間は、法務局によって異なります。申請先の法務局にご確認ください。

相続登記の完了後は、法務局から「登記完了証」や「登記識別情報通知」が交付されます。

費用の目安

相続登記にかかる費用は、司法書士に依頼する場合、登録免許税と司法書士費用が必要になります。

自分で相続登記の申請手続を行う場合でも、登録免許税が必要です。

登録免許税は、不動産の固定資産評価額に1,000分の4の税率を掛け算で出します。

例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地なら、登録免許税は4万円です。

司法書士による相続登記の申請手続代理とQ&A

司法書士は、相続登記の申請を含む相続手続を代理することができます。

司法書士がよく聞かれる質問を以下にまとめました。

司法書士による相続登記の申請手続代理とその費用

司法書士に相続登記の申請の代理を依頼した場合の報酬の目安は、日本司法書士会連合会の報酬アンケートをご参照ください。

報酬アンケートはあくまでも目安です。

司法書士の報酬は不動産の評価額や物件数、相続人の数などによって増減しますので、司法書士にご確認ください。

相続登記にかかる期間はどれくらいか?

相続登記の完了までにかかる期間は、事案によって異なります。

登記完了の目安については、申請先の法務局にご確認ください。

なお、相続人の人数や相続財産の種類が多い場合、戸籍謄本などの必要書類の取得に時間がかかったり、遺産分割協議に時間がかかったりする場合などは、相続登記の申請に至るまでに時間がかかることがあります。

相続登記の手続をするにはどうしたらいい?

相続登記の手続は、次の6つのステップで行います。
1.不動産に関する情報収集
2.亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍謄本等、法定相続人全員の戸籍謄本等の収集
3.固定資産評価証明書等、不動産の評価額が分かる資料の取得
4.相続登記に必要な書類作成
5.法務局へ登記申請
6.登記完了

相続登記を怠った場合、後から登記できるのか?

2024年4月1日から相続登記の申請義務化が始まり、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。

また、相続登記を放置すると、新たな相続が発生して、登記の名義人となるべき相続人が増えて行くことが考えられます。

どうしても3年以内に相続登記の申請ができない場合は、相続人申告登記制度を利用できます。

相続人申告登記制度を利用した場合、登記官が職権で相続人申告登記を行います。

この場合、相続人申告登記制度を利用した相続人については、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。

まとめ

不動産の名義を変更するには、相続登記の申請手続が必要です。

相続登記の申請手続には、相続のパターンによって必要な書類や申請書の記入方法が異なるため、司法書士に依頼するのがおすすめです。

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