【不動産を所有している方に】

①不動産などの財産を整理しておきましょう

『死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。』

村上春樹が「ノルウェイの森」で語った言葉です。

 
いつ訪れるか分からない死を遠ざけて考えてしまいがちですが、もしかしたら、すぐに訪れるかもしれません。
まだ早いと思っていても、相続人が発見しにくい財産、高価な財産などは、常日頃から、リスト化しておきましょう。
とくに、ネット銀行やネット証券の口座・暗号資産など、物理的に発見されにくい財産は、相続人となる方のために検索のヒントとなる情報を残しておかなければ、永久にそのままとなってしまうおそれがあります。
また、高価な財産の代表ともいえる不動産は、相続人が自ら法務局に申請しなければ、名義が変更されません。そして、そのためには、まず、ご自身が所有されている不動産を特定して整理しておくことが大切です。
たとえば、土地が一続きであるように見えても、実は筆が分かれており、複数の不動産となっていることもありますし、本来は違法なのですが、建物の表示が未登記であったり、逆に取り壊されていて登記だけ残っていたりすることもあります。
不動産が所在する自治体から送付される固定資産税の納付書や自治体に備え付けられている名寄帳も参考になりますが、共有不動産や非課税となる不動産などが漏れていることもあります。
そのため、まずは、ご自身で、権利証などを参考に、所有する不動産をリスト化しておきましょう。
令和8年4月までに「所有不動産記録証明制度」が開始されます。法務局に請求することで、ご自身が所有する不動産リストを取得することができるようになります。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

②相続人となる方を把握しておきましょう

『人生の悲劇の第一幕は、親子となったことに始まっている。』

芥川龍之介が「侏儒の言葉」で語った言葉です。

 
子を持つことは、かけがえのない喜びであるとともに、相続によるトラブルに巻き込んでしまい、それが子の大きな負担となってしまうこともないわけではありません。
相続人の基本は、配偶者と子どもたちです。
養子、前配偶者との間の子、婚姻していない者との間に生まれた認知した子も、子どもとして相続人となります。家族関係によっては、子どもたちの間での意思疎通が難しい関係が生じていることもあるでしょう。
また、ご自分の死亡よりも先に子どもが亡くなっていたら、孫のように直系卑属が相続人となります。孫や曾孫がいなければ、あなたの親、場合によっては祖父母といった直系尊属が相続人となりますし、直系尊属がいなければ、あなたの兄弟姉妹が相続人となります。兄弟姉妹があなたよりも先に亡くなっていたら、甥姪が相続人となります。
また、あなたの死後、相続財産の整理をしないまま配偶者が亡くなったら、配偶者の家系の相続関係を考慮しなければならなくなります。
このように、亡くなった順番によって、相続人となる方が変わることがありますので、まずは、現時点において、あなたの相続人となる方を把握しておき、その方があなたよりも先に亡くなってしまったら、その都度、ご自身の相続関係を考え直さなければなりません。
ところで、あなたが相続人だと思って財産を承継させるプランを立てていたとしても、その方が相続放棄という家庭裁判所への申述手続をすると、相続人となる方が変わってしまうことがあります。たとえば、子どもの全員が相続放棄をし、直系尊属が既に亡くなっているようなときには、あなたが予期しなかった兄弟姉妹あるいは甥姪が相続人になることもあります。
といっても、相続放棄をするかどうかは、相続人固有の権利ですし、相続人が、その判断をするのは、既に、あなたがお亡くなりになった後のことであり、ご自身で生前に準備できることは限られますので、あらかじめ相続人の範囲を確定させることはできません。
これもまた「人生の悲劇」といえるのかもしれません。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

  

③遺言を作っておきましょう

『死ぬときぐらい好きにさせてよ』

樹木希林が「120の遺言」でサブタイトルとした言葉です。

 
遺言は要式行為ですので、決まった要式で作成されていなければ無効となります。
もちろん、任意の書式や記録方法で、ご自身の財産の処分方法を想いとして書き留めておくことは自由にできますし、相続人となった方が、あなたの生前の意思を尊重して、その記録どおりに財産を処分することもあるでしょう。
しかし、預貯金の払い出しを求める金融機関や、不動産の名義変更を申請する法務局は、任意の書式では受け付けしてくれません。
そして、法的に効力のある遺言がないとなると、相続財産は、相続人の全員で話し合って、分配方法を決めなければなりません。これを遺産分割協議と言いますが、必ずしも円滑にまとまるとは限りません。
遺言があれば、遺産分割協議に起因する紛争が生じるリスクを防止することができます。
遺言の種類は、次のように、さまざまあります。ご自分に合った遺言方式を選びましょう。
・作るのに少し手間はかかりますが、公証人が関与し、保管してくれる公正証書遺言
・法務局での保管制度を使えば死後家庭裁判所での検認が不要となる自筆証書遺言
・遺言の内容をどうしても秘密にしたいときには秘密証書遺言
なお、不動産は、よほどの事情がない限り、物件ごと相続人の一人に相続させることが望ましいです。不動産が共有状態となると、処分や利用が難しくなることもあるからです。
また、できることなら、遺留分や特別受益があることに配慮して、相続人に遺言の趣旨を説明して、納得感を得ておきましょう。生前に説明することが難しいようであれば、遺言に付言をしておくこともできます。
ご自身の死後、空き家となるのなら、生前の処分や死後売却を前提とした遺言も検討しておくとよいでしょう。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

④不動産の管理が大変な方は民事信託を検討しましょう

『世の中を回している中心なんて、もしかしたらないのかもしれない。』

吉野源三郎が「君たちはどう生きるか」で、主人公のコペルに語らせた言葉です。

 
自分自身(相続人となる方を含む)で財産管理をするのが難しいのであれば、信頼できる他人に頼ってみるという、コペルニクス的発想で考えてみてもよいかもしれません。
民事信託とは、自宅やアパートの管理や売却等をご自分の信頼できる方に託すことが  できる制度です。また、ご自分が亡くなった後に不動産を引き継ぐ相手を指定することもできます。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 
 

【不動産を相続するかもしれない方に】

①ご自身が相続人であるかどうかを確認しましょう

『毎日を人生最後の日だと思って生きれば、いつか必ずその日は来るだろう。』

If you live each day as it was your last, someday you’ll most certainly be right.
スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学でスピーチした言葉です

 
あなたの大切な人の最期の日は、いつか必ず訪れます。もしかしたら、あなたの方が先かもしれません。それは誰にも分からないことです。日常的に備えておきましょう。
あなたが父母の相続人であることは当然のこととご理解されているものと思います。順番としては不自然ではありますが、あなたが子どもの相続人となるかもしれないことも想像しやすいでしょう。
見落とされがちなのが、兄弟姉妹のような関係です。あなた自身の兄弟姉妹だけでなく、場合によっては、父母の兄弟姉妹や祖父母の兄弟姉妹の相続人にあなたが該当するようなケースもあります。死亡の先後によって、相続人の範囲は変わってきますし、順番によっては、配偶者の側の兄弟姉妹が相続人となることもあります。兄弟姉妹に子どもがいるから安心とはいえません。その子どもが相続放棄をすると、相続人が変わってくるからです。
また、ドラマのような展開ですが、被相続人の戸籍を調査してみると、生計を共にしていた相続人が把握していなかった新たな相続人が判明したというケースも珍しくはありません。
相続人を把握するためには、まずは被相続人の戸籍を辿る必要があります。
戸籍のコンピュータ化が進み、現在は、横書きで読みやすくなっており、さらに仮名による検索もできるようになりましたが、過去の戸籍は手書きで記載されていて判読が困難なものもあります。
転籍されていると、転籍先の自治体に戸籍の発行を請求しなければならないという手間もありましたが、戸籍の広域交付が開始され、直系卑属や直系尊属についての請求を本人がするのであれば、他の自治体に請求する手間がなくなりました。
便利になりつつありますが、戸籍の附票や住民票の除票などにより、登記記録上の所有者と戸籍の名義人とが同一であることをも証明しなければならないなど、相続登記特有の難しさは依然としてあります。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

②遺言書の有無を確認しましょう

『証拠は真実を枯渇させる。』

Evidence exhausts the truth.
ジョルジュ・ブラックが語った言葉です。

 
生前、父が不動産を私に相続させると、いくら口頭で言っていたとしても、遺言としての法的効果は生じません。
被相続人の遺言を実現すためには、民法のルールに沿って遺言書を作成しておかなければならないだけでなく、その記載内容や作成方法、保管方法にもそれぞれルールがあります。
面倒に感じるところもあると思いますが、遺言があれば、ないときよりは容易に、被相続人の最終意思を実現できますので、あなたが相続人となった場合には、まず、遺言書の有無を確認するようにしましょう。
遺言の保管場所としては、公正証書遺言であれば、最寄りの公証役場で検索することができます。検索費用は無料です。検索の申し出ができるのは、相続人等の利害関係人に限られます。
公正証書遺言とは別の制度として、自筆証書の遺言書保管制度もあります。所定の手数料がかかりますが、相続人等の利害関係人であれば、最寄りの法務局で遺言が保管されているか確認することができます。
そのため、被相続人が遺言をしている可能性が僅かでもあるのであれば、「公証人役場」と「法務局」への照会をなさってください。
もっとも、これらの場所に保管されていない遺言も、遺言書としては有効です。したがって、自宅や貸金庫等に遺言が残されている可能性も考慮する必要があります。
ただし、法務局保管制度を利用していない自筆証書遺言を発見したら、家庭裁判所で検認手続をしなければなりませんので、ご自身で開封することはしないでください。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

③遺言書がなければ、相続人間で遺産分割協議をしましょう

『私は巨額の相続財産を不幸と考えている。それは単に人々の能力を鈍らせるだけだ。』

I regard large inherited wealth as a misfortune, which merely serves to dull men’s faculties.
アルフレッド・ノーベルが語ったといわれる言葉です。

 
遺言書がないと、被相続人の相続財産は、原則として、法定相続分で相続人間に相続されます。配偶者、2人の子どもという相続関係であれば、配偶者2分の1、子どもが4分の1ずつになります。相続の時期や相続人の人数によっては、相続分の計算が複雑となることもあります。
もっとも、相続人は法定相続分にとらわれることなく、相続人間で、相続財産の分割の内容について決めることができます。とくに不動産については、法定相続分どおりの持ち分で相続人が相続しても、利用や処分に不便となることが多いことから、相続人のうち1名の名義とすることが多いようです。不動産の物件ごとに別の相続人が取得することもできますし、不動産を取得しない相続人は、その分金銭を多く取得するという内容とすることもできます。
また、相続人の中には、被相続人の生前に、とくに面倒をみたというような寄与分の主張をする方がいたり、逆に、被相続人から特別に援助を受けたことがあるというような特別寄与分の主張をされることもあり、話し合いがスムーズにいかないこともあります。
相続財産は、親族間でのトラブルの原因となることもあり、遺産分割がまとまらないため、不動産の相続登記がされないといった問題もあったことから、遺産分割にあたり特別の事情がある場合には、10年以内に主張しなければならないと民法で定められました。
また、相続人同士で、協議がまとまらないようであれば、家庭裁判所に調停を申し立てることもできます。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

④相続登記をしましょう

『真実とは、経験というテストの結果、得られるものである。』

Truth is what stands the test of experience.
アイン・シュタインが語ったといわれる言葉です。

 
相続により取得したといっても、登記をしておかなければ、第三者に権利主張できないことがあります。
相続させる旨の遺言について、法定相続分を超える部分については、登記等の対抗要件を具備しなければ、債務者・第三者に対抗することができないからです。
また、対抗力付与の観点のみならず、相続登記の申請は法律上の義務でもあります。
相続登記をしておかないと、過料という不利益が生じるリスクがあるほか、社会資源の不活性化という大きな問題も生じます。
相続の発生を知らなかったり、遺産分割がまとまらなかったりという事情がある場合には、不利益が生じないよう配慮されているほか、どうしても相続登記ができない事情があるのであれば、相続人申告制度という簡易な制度も創設されています。
相続登記をするには、戸籍、住民票の写し、遺産分割協議書等をつづって、管轄法務局に申請しなればなりません。相続関連書類は、金融機関や他の役所でも提出をすることがありますので、原本還付手続をするか、法定相続情報証明制度を利用するなどの方法があります。
相続登記をするには、登録免許税という税金も発生します。不動産の評価額が1,000万円であれば、4万円という額を収入印紙か電子納付で納めなければなりません。
登記を申請してから、通常であれば、1週間から2週間ほどで、法務局内の登記手続が完了しますが、書類に不備等があれば、補正を指示されることもあり、場合によっては、何回か法務局を訪れなければなりません。
どんなに面倒でも、相続財産となった不動産の権利を公示するためには、申請した登記の結果、得られるものなのです。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

⑤相続そのものをしたくないときは家庭裁判所での相続放棄手続があります

『自由を放棄することは、人間としての資格を放棄することである。』

To renounce liberty is renounce being a man,to surrender the rights of humanity and even its duties.
ジャン・ジャック・ルソーが「社会契約論」で語った言葉です。

 
自由を放棄してはなりませんが、相続ならば、放棄することができます。
ただし、一定期間内に家庭裁判所への申述手続をしなければなりません。一般にいわれることの多い遺産分割協議での「放棄」とは異なります。遺産分割協議では、負債についての帰属を決めることはできませんが、相続放棄であれば、法律の効力として、最初から相続人でなかったものとみなされますから、負債は相続されません。
子どもの全員が相続放棄をすると、両親・祖父母といった直系尊属が相続人となり、直系尊属がいない、あるいは全員相続放棄をしたとなると、兄弟姉妹が相続人となります。配偶者は常に相続人となりますが、配偶者も相続放棄をすることができます。
兄弟姉妹等の相続人がいない、あるいは全員が相続放棄をしてしまったとなると、相続人不存在となります。
相続人不存在である場合には、相続財産の利害関係人等が家庭裁判所の相続財産管理人を選任して、相続財産を処分すると法律で定められています。ところが、相続財産管理人を選任するためには、一般に50~100万円程度を裁判所に予納しなければならず、手続に1年以上かかることも稀ではありません。したがって、相続財産管理人が選任されず、放置されたままとなっている相続財産も多数存在している状況です。
相続人がいない、あるいは全員が相続放棄をした相続財産については、社会資源として不活性化されざるをえない現実となっています。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

⑥要件は厳格ではありますが、不動産を国に引き取ってもらいたいときは、相続土地国庫帰属制度があります

『未来を予測する最良の方法は、未来を創ることだ。』

The best way to predict the future is to create it.
エイブラハム・リンカーンあるいはピーター・ドラッガーが語ったとされる言葉です。

 
所有者不明土地の急増を受け、その大きな要因として、相続を契機として望まない土地を取得した者の負担感が大きいことが挙げられることから、相続等により取得した土地を手放す制度が創設されました。
それが、相続土地国庫帰属制度です。不動産利活用の未来のために、新しい制度が創られたものといえます。
しかしながら、膨大な不動産を国が引き受けるとなると、その管理維持に要する費用等が全ての国民の負担となりかねません。
そこで、制度の利用の際には、1筆当たり1万4,000円の手数料を納付し、帰属担当登記官の審査を経たうえで、9か月程度の審査の結果、承認されると、一定額の負担金の納付することで、国に不動産の名義変更をすることができるようになりました。
ただし、基本的に、物件の状況や権利関係が複雑ではないものが承認される仕組みとなっているため、当面は、国が引き取ってくれるケースは国民のニーズに比して、少ないのではないかと思われます。
利用状況、運用状況を踏まえつつ、よりよい制度とすることが目指されなければなりません。制度を利用するだけでなく、制度を育てていくことも、私たち司法書士の使命です。
相続登記に関する疑問は、司法書士にご相談ください。

 

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