相続登記は、亡くなった人の不動産を相続人名義に変更する手続です。この手続には、被相続人(亡くなった方)と相続人全員の戸籍全部または一部事項証明書、戸籍謄本、除籍全部事項証明書、除籍謄本、改製原戸籍(以下「戸籍謄本等」という。)が必要となります。
相続登記の際にこのように多数の戸籍謄本等が必要となるのは、被相続人と相続人の間に親子関係や兄弟姉妹関係など相続関係があることを証明するとともに、他に相続人がいない(他に子がいないなど)ことを証明する必要があるからです。相続人であることと他に相続人がいないことを証明することで相続人を確定します。そのために被相続人の出生から死亡に至るまでの全ての戸籍謄本等と相続人全員の戸籍謄本等が必要になります。

この記事では以下のポイントが分かります。

・具体的なケースにおける必要な戸籍謄本等
・亡くなった人の戸籍謄本等の取得から始まる必要な戸籍謄本等の取得の流れ
・戸籍法改正に伴う戸籍謄本等の広域交付

1 具体的なケースにおける必要な戸籍謄本等

図1のような親族関係で、令和5年12月20日にAが死亡した場合の相続関係を確定するのに必要な戸籍謄本等について考えてみましょう。Aには配偶者Bと平成5年4月1日に婚姻している子Cと独身で未婚の子Dがいて、Aの父母XとYは既に死亡しているとします。

図1

(1)Aの戸籍全部事項証明書

Aの戸籍全部事項証明書を取得すると、Aが死亡した記載と配偶者としてBの記載、子Dの記載があります。この戸籍全部事項証明書でBが配偶者であることとDが子であることが分かります。Cは現在の戸籍を編成した時点では婚姻し別に戸籍を作成しているので記載されていません。この戸籍からはAとCの親子関係は判明しません。

(2)Aの改製原戸籍謄本

現在のコンピュータ化された戸籍全部事項証明書に改製する前の縦書きのものです。改製原戸籍謄本といいます。この改製原戸籍謄本には配偶者Bと婚姻して戸籍を編製した旨、子CとDが出生した旨、Cが婚姻して別の戸籍を編製した旨が記載されています。

(3)Cの戸籍全部事項証明書

AとCに親子関係があることは2の戸籍全部事項証明書で判明していますが、相続開始時にCが生存していたこと、現在も生存していることを証明する必要があるのでCの戸籍全部事項証明書を取得します。

(4)Xの除籍謄本

AはBと婚姻する以前は、Aの両親XYと同じ戸籍に入っていたはずです。そこで筆頭者がXであったとするとXの除籍謄本を取得します。改製原戸籍謄本である場合も考えられます。実際には途中で転籍をしていたり、人によっては婚姻と離婚を繰り返していたりするなどして、更に戸籍謄本等を取得する必要が生じる場合もあります。Aの生まれた時期によってはXの両親の除籍謄本または改製原戸籍謄本を取得する必要がある場合もあります。被相続人については出生から死亡に至るまで一連の戸籍謄本等を取得することで子はCD以外に存在しないことも証明できるのです。

2 戸籍謄本等の広域交付

Aの最後の本籍が神戸市で、Xの本籍が札幌市であった場合など、従来はそれぞれの本籍ごと各自治体に個別に請求する必要がありました。郵送で請求することも可能とはいえ、戸籍を取得するには時間と労力がかかっていました。

このような状況を改善するために、戸籍法の改正が行われ、2024年3月1日から戸籍謄本等を、本籍地だけでなく、居住地など最寄りの市区町村役場でも取得できるようになったのです。戸籍謄本等の広域交付と呼ばれています。

広域交付では、本人、配偶者、父母祖父母などの直系尊属、子や孫などの直系卑属の戸籍謄本等を請求することができます。兄弟姉妹の戸籍謄本等は請求することができません。

広域交付を利用する場合には、戸籍謄本等を請求できる人自身が市区町村の戸籍担当窓口に直接出向いて請求する必要があります。郵送や代理人による請求はできません。

また、窓口では本人確認のため、運転免許証、マイナンバーカードやパスポートなどの顔写真付きの身分証明書の提示も必要になります。

広域交付の制度により相続登記申請に伴う戸籍謄本等の取得の負担が軽減できると考えます。

司法書士をお探しですか?
お探しの場合はこちらをクリック

ご利用端末の位置情報からお近くの
司法書士をお探しいただけます

都道府県や所在地から
司法書士をお探しいただけます

都道府県から司法書士を探す

司法書士を探すには?