『遺言書があるかどうすればわかりますか?』

「そういえば死んだ親父、遺言書書いたって言ってなかった?」
葬儀も終わりようやく落ち着いた頃、亡くなった父親が生前に遺言書を書いていたことを思い出しました。しかし、父親が遺言書をどこに保管していたのかまでは確認をしていませんでした。このように「遺言書はあるはずなのに、どこにあるのかわからない」という場合、どうすればよいのでしょうか。

自宅の金庫や貸金庫を探す

まず、権利証(登記済証、登記識別情報)や重要書類を保管している自宅の金庫などを探してみましょう。遺言者の死後、遺言書が見つからないと、遺言書の内容について誰も知らないままになってしまいます。遺言書の内容を誰も知ることができなければ、遺言者の最終的な意思を実現することができませんので、親族の誰かが見つけやすい場所に保管している可能性が高いでしょう。また、遺言者が金融機関との間で貸金庫の契約をしている場合は、遺言書を貸金庫に保管している可能性もあります。遺言者の生前、取引のあった金融機関に問合せをしてみましょう。

公正証書遺言を生前に作成していた場合

遺言書を公正証書で作成していた場合、最寄りの公証役場で検索してもらうことができます。遺言情報管理システムにより、全国の公証役場で作成した公正証書遺言の情報が管理されています。このシステムにより、公正証書遺言の有無及び保管している公証役場の検索が可能となります。ただし、遺言検索の申出は、相続人等の利害関係者のみに限られます。生前、公正証書で遺言を作成していた可能性がある場合は最寄りの公証役場に問合せをしてみましょう。

自筆証書遺言書保管制度の開始

令和2年7月10日、自筆証書遺言の「遺言書保管制度」が開始されました。自筆証書遺言の場合、制度開始前は前述のとおり自宅の金庫や金融機関の貸金庫等で保管することが多かったのですが、この場合、紛失、隠匿、改ざん、未発見等のリスクがありました。しかし、「遺言書保管制度」が開始されたことにより、自筆証書遺言に関するリスクが改善されました。

遺言書保管制度

遺言書は、法務局において適正に管理、保管されます。保管申請時には、民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するか、遺言書保管官のチェックを受けます(注:遺言書の内容や有効性を保証するものではありません。)。遺言書は、原本は遺言者死亡後50年間、画像データは遺言者死亡後150年間と長期間適正に管理されます。手数料は遺言書1通につき3,900円です。また相続開始後、家庭裁判所における検認手続が不要になり、非常に使いやすい制度です。法務局が遺言者の死亡を確認した場合、遺言者が申請時に指定した相続人等に通知できる点も利便性を向上させているといえるでしょう。遺言者が生前、遺言書保管制度を利用している可能性は今後ますます高くなるものと思われます。

「遺言書保管事実証明書」の交付請求

遺言書が法務局に保管されているかわからない場合、その遺言書の保管の事実の有無を確認する方法があります。「遺言書保管事実証明書」の交付請求です。この証明書を請求することにより、遺言書が遺言書保管所(法務局)に保管されているかどうかを確認することができます。手続ができるのは相続人、受遺者、遺言執行者等に限定されます。証明書の交付請求は、窓口、郵送どちらでも可能です。手数料は証明書1通につき800円を収入印紙で納付します。請求した遺言書保管所(法務局)に遺言書があることが判明したら、次は「遺言書情報証明書」の交付を請求します。

「遺言書情報証明書」の交付請求

「遺言書保管事実証明書」の交付請求にて遺言書保管所(法務局)に遺言書が保管されていることが判明したら、次に「遺言書情報証明書」の交付を請求します。この証明書は、遺言書の画像情報が全て印刷されており、遺言書の内容を確認することができます。遺言書の原本はそのまま遺言書保管所(法務局)に保管されますので、遺言書原本の代わりとしてこの証明書を各種相続手続に使用することになります。手続ができるのは「遺言書保管事実証明書」の交付請求同様、相続人、受遺者、遺言執行者等に限定されます。窓口、郵送どちらでも可能であることも同様です。手数料は証明書1通につき1,400円を収入印紙で納付します。「遺言書情報証明書」の交付を受けると、遺言書保管官は、交付請求者以外の全ての相続人等に対して、関係する遺言書を保管している旨を通知します。この通知により、全ての関係相続人等に遺言者が保管されていることが伝達されることになります。

まとめ

自筆証書遺言の場合、遺言書の保管方法について選択肢が少なく、紛失、隠匿、改ざん、未発見等のリスクがありました。しかし、「自筆証書遺言書保管制度」により、そのリスクは大きく改善されたといってよいでしょう。家庭裁判所の検認手続が迅速な相続手続を阻害していた一面もありますが、本制度によって検認手続も不要になり、スムーズに遺言書を利用した相続手続を進めていくことが可能になります。本制度に基づく手続、遺言書を利用した相続手続について不明な点がある場合はお近くの司法書士にご相談ください。

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