遺言書が2通見つかったときはどうしたらいいか

遺言書が2通見つかったとき
「亡くなった家族の遺品の整理をしていたら、遺言書と書かれた封筒が2通見つかった」など、同じ被相続人について複数の遺言書が存在することが判明した場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
検認手続
見つかった遺言書が自筆証書遺言の場合には、まず、家庭裁判所に提出をして、その検認を請求する必要があります。遺言書が2通見つかった場合には、書かれている中身の違いが気になるところではありますが、検認手続をしなかったり、封印のある遺言書を家庭裁判所外で開封してしまったりした場合、5万円以下の過料に処される可能性がありますので、注意してください。なお、法務局における自筆証書遺言書保管制度を利用している場合や、公正証書による遺言の場合には検認手続は不要です。
検認手続の流れの詳細については、本サイト別記事「あって良かった遺言書」(https://souzoku.shiho-shoshi.or.jp/column/002/)をご参照ください。
判断のポイント
ポイント① 内容が抵触しているか
民法では「前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。」と定められています。つまり、2つの遺言書の内容に抵触(矛盾)する部分がある場合、後に作成された遺言(最新の遺言)が優先することになり、前の遺言については抵触している限度でその効力が失われることになります。そのため、2つの遺言書が見つかった場合には、その内容を確認し、抵触(矛盾)する部分があるかどうかを見比べる必要があります。
ポイント② 遺言書の日付
上記①で抵触(矛盾)する部分があった場合、どちらの遺言書が優先されるかは、遺言書に記載された日付の先後によって判断することになります。そしてその日付が後である方(新しい方)の遺言書が優先されることになります。
なお、遺言書の種類によって、その優劣が判断されることはありません。例えば、あらかじめ公正証書による遺言が作成されていても、後日、自筆証書遺言が作成され、その内容が前の遺言と抵触(矛盾)していた場合には、自筆証書遺言の内容の方が優先することになります。
具体例
【ケース1】書かれている内容が抵触しない場合
一方の遺言書は「Aに全ての預貯金を相続させる」という内容で作成されていて、もう一方の遺言書は「Bに全ての不動産を相続させる」という内容で作成されていた場合、2つの遺言書の内容は抵触していないため、どちらの遺言書も有効となります。
【ケース2】書かれている内容が抵触する場合
1つ目の遺言書が令和6年1月15日に「Aに全ての不動産を相続させる」という内容で作成されていて、2つ目の遺言書は令和7年1月15日に「Bに全ての不動産を相続させる」という内容で作成されていた場合、後に作成された遺言書が優先することになるため、Bが全ての不動産を相続することになります。
【ケース3】書かれている内容に一部抵触する部分がある場合
例えば、先に作成された遺言書では「甲土地及び乙土地はAに相続させる」と書かれていて、後に作成された遺言書では「乙土地はBに相続させる」と書かれていたように、内容が一部抵触(矛盾)している場合はどうでしょうか。結論としては、乙土地については、後に作成された遺言書の内容が優先される結果、Bが相続することになり、甲土地については、先に作成された遺言書の内容に基づき、Aが相続することになります。
まとめ
このように、遺言書が2通見つかった場合には、「内容が抵触する部分の有無」及び「日付の先後」によってどちらが優先するか判断することになります。この考え方は3通以上の遺言書が見つかった場合も同様です。もし、身近で発生した相続でこのようなケースに遭遇した場合には、本記事の内容を参考にしてみてください。